「てんやわんや」「自由学校」に続く終戦三部作の三作目。戦後米軍が進駐して一時活況を呈するが、その進駐軍が横浜を引き上げるという時期の横浜、進駐軍の兵士との混血児のための慈善養護施設「双葉園」が舞台となっている。その元財閥の未亡人が設立した双葉園で、働く亮子と、戦後ふぬけのようになってしまい、まったく働かず、家でごろごろしているだけの夫を中心に、産児制限運動に携わる女性、プロ野球選手、シューマイの売り子、作家、そして横浜に滞在する外国人など、戦後を象徴するような登場人物がが絡み合い話が進み、もちろん最終的には大団円を迎える。
物語の最後の方でやっと何かに目覚め、働き出す夫が大団円における鍵を握っているのではなかと思わせつつも、微妙にキーパーソンとなっていなくて、結局は、元財閥の未亡人がすべてをおさめてしまうところなどは、ちょっと物足りない気もするけれど、それも戦後を象徴していると言えるのかもしれません。
双葉園は、戦後、獅子文六が住んでいた大磯にあるエリザベス・サンダース・ホームをモデルとしたものらしい。大磯の駅を出たところにそんな施設があったなぁ、なんてふと思ったりもする。が、しばらくたって、高校の時に、エリザベス・サンダース・ホームの見学に行ったことを思い出した。あれは何で行ったのだろうか?そもそも簡単に見学できるような場所なのだろうか?ぜんぜん思い出せない。夏休みの初めの方の時期で、集合場所の大磯駅がものすごく暑かったのと、施設内の木陰が涼しげだったのは覚えていて、それほど大人数ではなかったので、多分、図書委員のなにかで行ったのだろう。それにしても図書委員の活動とエリザベス・サンダース・ホームが結びつかない。
絶対にありえないことだけれど、その頃、獅子文六を読むような高校生だったら、少しは興味の度合いも違って、きちんと記憶に残っていたりしたのかもしれない。そういえば、夏の大磯なんてもう何年も行ってない。西湘バイパスと平行に走る海沿いのサイクリングロードを通って、バイト先まで通っていたことを思い出した。