「単線の駅」-尾崎一雄-

世田谷文学館で開かれている「花森安治と『暮しの手帳』展」に行ってきました。特に目新しいものはなかったけれど、原画とか手紙とかを見ていると“手描き”の力強さを感じますね。ただ、「暮しの手帖」という雑誌が、編集長である花森安治の思いをストレートに表したものであることはわかるけれど、今もあるわけじゃないですか。それなのに「暮しの手帖」=花森安治という図式があまりにも強くて、それはどうなのか、と。松浦弥太郎なんて、「今こそ僕らの『暮しの手帖』作らなくてはいけない」といった意味のことをコメントしてるし‥‥。
それから、一番はじめに書かれていた「~最先端の『ロハス(Lifestyles Of Health And Sustainability)=ココロとカラダと地球にやさしいライフスタイル』といった言葉には、花森安治が雑誌でくり返し主張して来たメッセージと共通するものがありそうです。~」というコメントを読んで、なんだかこの展覧会に対する興味が薄れてしまったということもある。「LOHAS」なんて企業が儲けるためのキーワードに過ぎないわけで、その企業や政府を敵に回しても自分の生活を守れってことなんじゃないか。「地球にやさしいライフスタイル」だけを主張する人が、トースターの性能実験ののためだけに、何万枚もの食パンを焼くのか。その行動を突き動かしているのは、企業や政府への強烈な不信感ではないのか。それをタイアップ記事ばかりの「クーネル」と一緒にされてもね。そういう意味では、「花森安治と『暮しの手帳』展」という企画自体が矛盾しているといえるかも。適当。
そういうこともあって今回はカタログも買わずじまい。強い風が吹き荒れる中、入り口で開店していた旅する本屋「traveling cowbooks」が、寒くて気の毒だったなぁ、なんてことばかりが気になってしまいました。