「マジメ人間」-山口瞳-

私小説とも少し違うような、身辺小説、もしくはエッセイとも言えるような作品と、フィクションと思われる作品が、半分ずつ収録された本。例によってかなり自虐的なのだが、これだけ山口瞳の本を読み続けていると、それほどつらい感じを受けなくなってしまう。ちょっと慣れてしまってると言えるかもしれない。

小学校の4年くらいの時だっただろうか、通信簿に「何ごともそつなくこなす」と、褒められてるんだかなんだか分からないコメントが書かれていたのを憶えている。多分、今でもそうなんだろうと思う。初めてのことでもなんとなく“こなして”、そのままになってしまっているような気がする。頭のいい人間ならば、一番初めのときでもちゃんとそれを理解して取り組むし、一番始めにつまずけば、初歩の基本的なところで足を止めて取り組む。でも初めの一歩をなんとなくカンでやり過ごしてしまうと、そのときはいいけれど、その後の努力をしないで過ごしてしまい、後で痛い目に遭う。「何ごともそつなくこなす」というのは、そういうことだ。だから今でも何ごともひと通りはできると思うけれど、得意なものはまったくない。でも、それは山口瞳にとって“できる”とは言わないんだろうけれど・・・・。