「オディール」-レーモン・クノー-

-■アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」を読んだのはいつのころだったのだろうか?20代の前半だったと思うけれど、もうすっかり忘れてしまってます。いや、そもそも内容をちゃんと理解していたかというと、たぶん、してない。
これは、レーモン・クノーが若いころに参加したシュルレアリスム運動への参加と訣別、そしてオディールとの恋愛を描いた自伝的な小説。
登場人物も実在の人物をモデルにしていて、解説を読むと誰がどの人物なのか書いてあるのですが、もともとどんな人物なのかわからないので、どういう風に解釈すべきなのかもわかりません。
それよりも、徴兵でアラブに赴き、帰ってきた21歳で生まれたと宣言し、数学に耽溺している主人公が、シュルレアリスム運動にかかわることによって、より現実の世界に根ざした自分に生まれ変わるというストーリーと、容姿や性格、そして何を考えているかなどまったく書いていないオディールとの不思議な恋愛物語として素直に楽しめました。
ひさしぶりに「地下鉄のザジ」を見たくなった。

■「地下鉄のザジ」と言えば、20代の頃、ルイ・マルの「鬼火」がベスト5に入るくらい好きだった。アルコール依存症の治療を受けている人生の虚無に憑かれた主人公のアランが、自殺するまでの2日間を描いた作品。昔の友人や恋人に会いに行くものの容赦のない陰口を言われ、自暴自棄になっていく様子がエリック・サティのピアノをバックにモノクロの映像で映し出されていく。この映画を見た当時、自分もモラトリアムの時期で、友だちが次々に就職して一人取り残されていく状態だったこともあり、ものすごく主人公に共感したものだけれど、20年以上経った今、改めて見直したらどんな印象を受けるのだろうか。逆に当時はそれほどお酒を飲んでいなかったにたいして、今はけっこう呑むようになってしまったので、アルコール依存症として共感できちゃったりして(それはそれでしゃれにならない)。夜中にワインとか飲みつつDVDを見てみますかねw

■ところでこの「鬼火」はピエール・ドリュ・ラ・ロシェルの「ゆらめく炎」という作品が原作になっているということをはじめて知りました。ピエール・ドリュ・ラ・ロシェルは、第二次世界大戦中、反ユダヤ主義の雑誌に寄稿するなど、ファシズムを賛美する活動をしていた作家らしいです。そしてドイツの旗色が悪くなった1945年3月にレジスタンスによる復讐を逃れるため自殺したとのこと。
ヌーヴェル・ヴァーグに分類される監督の映画の原作が、そういう経歴の作家の本だったということにちょっとびっくりしている。こちらも読んでみて、映画と比べてみたいけど、なんか読んでてつらくなりそうな小説みたいなんですよねぇ。

-■さて、3days Bookstoreまであと2日。直接3days Bookstoreとは関係ないけれど、ひさしぶりに古本屋だけが集まるイベントに参加するということで、なんとなく古本屋について考えたりしてる。今回参加する古本屋は、それぞれ特色や得意分野があって、そうした古本屋が集まることで、3日間だけ一つの古本屋を開く、というのが、コンセプトの一つなのだけれど、古本屋って基本的に日本全国で同じ古本屋はないんですよね(ブックオフとかのチェーンはまぁ置いておきます)。特に取り扱う本のジャンルを決めていないどんな町の古本屋でも、買取の本はそれぞれ違うし、仕入れる本も違う。新刊の本屋だったら、今月出る新刊がどのお店にも並ぶのだろうけど、そういうことはない。
だからわたしの認識としては、古本屋というのは、1店舗のみだけでなく、(日本全国と言っちゃうと広すぎるので)自分が行ける範囲内の町にある古本屋全部を合わせて一つの古本屋なんじゃないかなと思う。そうやって各古本屋が集まることで、幅広いジャンルの本をカバーし、かつそれぞれのお店で古い本を扱うことで時間軸の幅も広がっていくわけです。
いうなれば、新刊の(特に大型の)本屋さんは今ある本を幅広く扱うことで面を広げていっているのであくまでも平面なんだけど、古本屋は、いくつもの古本屋が集まることで面を広げつつ、各店舗で時間を掘り下げることで深さ(高さ)が出てくるので立体になるんじゃないかな、と。
そんなわけで、今回の3days Bookstore、いい形の立体になるといいな、と思ってます。

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