「紅茶と薔薇の日々」-森茉莉-

-■幼いころに食べた森鴎外から伝わった欧風の料理や、パリで食べた料理、住んでいる下北沢周辺のお店、そして森茉莉自身が作る料理の紹介など、食についての文章を集めたエッセイ集。もともとは編者の早川茉莉が単行本に入っていない文章を集めていて、それを一冊にまとめる予定だったとのことですが、紆余曲折あり結果としてテーマ別にまとめたとのこと。このほかにもファッションについて、生き方についてのエッセイ集が出てます(もっと出てるのかもしれないけどわかりません)。
「私的読食録」での角田光代の言葉を、また思い出しちゃうんだけど、女性らしくかなり詳細に食べものそのものや作り方について書かれてるし、自分の好きなこととそれ以外のときの落差があって、ある意味わかりやすいのかもれないけれど、どこかつかみどころがない。そして、ものすごく女性っぽい文章だと思うけど、なんとなくつい引き込まれてて読んでしまう。でも文章を読んでいて、自分がちゃんと理解・共感できてるかというと、自信はない。
まぁそんなことを言えるもの、エッセイしか読んでないからかもしれません。もし「甘い蜜の部屋」などの小説を読んだから違う印象になる気がするけど、どうなんでしょ。いや、逆にそれが怖くて小説を読んでない、とも言えるかも?

■森茉莉が下北沢でよく行く喫茶店や食べもの屋などについてエッセイに、添えられたお店の場所などを示す手書きの地図がいい。手書きなので取り上げられているお店のほかには最小限のことしか描かれていないけれど、なんとなく手書きの地図って見てるだけで楽しい。
いつか手書きの地図が描かれている本を集めてカヌー犬ブックスで特集してみたい。と言っても、すぐに思いつくのは松浦弥太郎の「居ごこちのよい旅」くらいですけどね。これは、雑誌「coyote」に連載されていたときから好きでよく読んでいて、特にサンフランシスコの地図は、サンフランシスコに行ったときに雑誌を切り取って持って行った思い出がある。若木信吾の写真もいいし、文庫にもなっていますが、大きなサイズで持っていたい本。

-■3days Bookstoreまで、もう2週間を切って少しずつ準備を始めてます。今回は古本屋さんだけのイベントなので、基本的にはいつものように料理随筆とかレシピ本とかが中心になっちゃうんだけど、今まで持っていくのに躊躇していた文芸書なども持っていくつもりです。場所も落ち着いた雰囲気になると思うので、ゆっくり見ていただいて、気になったものがあれば、どこかに座ったりしてちょっと読んでもらえればと思います。
食べものについての随筆って、書いている作家も、小説を書くときよりはもちろん、随筆としても、題材的にも世相などについて書いているときよりも、どこかリラックスした感じで書いていて、読むほうも気楽に読めるし、逆に小説などではあらわれない作家の素顔も垣間見れたりします。なので、今まで興味のなかった作家や敬遠していた作家の本でも、ちょっと読んでみると、見方が変わるのではないかとも思うので、こういう機会に手にとってもらえるとうれしいです。