「私的読食録」-角田光代、堀江敏幸-

-■小説、絵本、詩集、料理本など、さまざまな本で登場する「食」について、角田光代と堀江敏幸が交互につづったエッセイ集。雑誌「dancyu」での連載をまとめたものになります。単行本にするにあたっての二人の対談も収録されてます。基本的に今手に入る本を紹介しているので、読みたい本をリストにして本屋さんで探してみるのにちょうどいいと思います。
なんとなく、角田光代は食に関する表現について語ることが多くて、ときには、小説に書かれている食べものを実際に食べた気にさえなって、実際にそれを食べた時に違和感を覚えたりするのに対して、堀江敏幸のほうは、その本に書かれている食にいたるまでの過程だったり、意味合いを語ってることが多いように思う。ただ、その意味合いが堀江敏幸の過去の経験やほかの本に出てくる同じ食べものについて書かれていたりするので、一読すると論理的な気がするけれど、よく考えると論理的でもない気がします。
そういう意味では、二人とも普通の食べものに関するエッセイとは、どこかアプローチが違っていて、しかも二人のアプローチが違うので、紹介されている100冊もあるわりには飽きずに読めてしまいます。まぁ個々の文章が短い、ということもあるんですけどね。
角田光代の本は読んだことがないので、よく分からないけど、堀江敏幸は、掲載している雑誌が「dancyu」で、かつ短めの文章ということで、ほかの本での本の評論と違ってさらりとしている。堀江敏幸の本の紹介(評論)って、いろいろ枝葉が広がって複雑になってしまって、まぁそこがおもしろいと言ったらおもしろいんだけど、読んでて迷子になってしまうことがわりとあるのです(わたしの理解力が低いせいもあります)。

■週末は吉祥寺のにじ画廊でやっていた渡部知樹くんの個展へ。わりと明るい色調の抽象画で、これまでの個展で展示されているものを大きくは変わらないのですが、じっと見ていると前回とはどこか違う雰囲気があって、それがなんなのか分からないけれど、年を追いつつ何回か個展に通っていると(というほど毎回見ているわけではない)、その変化の移り変わりがおぼろげな感情として浮き上がってくるような気がするけど、それがなんなのかはわかりません。知樹くんにしかわからないのかもしれないし、知樹くんにも分からないのかもしれない。
今回、展示されていた絵では、赤い線を基調とした「背景」という絵が、なんとなくひかかったのだけれど、でも実は、一番ひかれたのは、ソファーの後ろにあった、はがきサイズの小さな絵だったりします。具体的なものが描かれているような感じなんだけど、でもなんだかはっきりはしてないのに、小さなサイズの中に行儀よく絵が座ってるという感じがよかったです(なに書いてるのかわからない)。
そのほかにもおなじみの鳥のオブジェやこれまでの活動のスクラップ帳、一冊ずつしかないちょっとシュールな絵本などが置いてあって、あれこれ見ていると、なんかほっとしたりしました。そう、知樹くんの作品って、見てるとなんだか幸せな気分になるんですよ(気のせいかもしれないけど)。そして今回も鳥オブジェを一つ購入。展覧会に行くたびに一つずつ買っている鳥もけっこう集まってきました。

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