「石垣の花」-木山捷平-

-■作家仲間のこと、来日したビートルズのこと、戦争のこと、中国の友だちのこと‥‥など、身辺雑記をまとめたもので特にテーマはない。が、飲みの席で指を怪我させられた時の話が執拗に書かれてるのがおかしい。後日の飲み会の席で怪我させた人にそれを言ったらすっかり忘れてて、随筆を書くネタができてよかったじゃん、みたいなことを言われたことに対する腹いせなのかもしれない。まぁこの指の怪我以外にも交通事故にあった時のことなど、自分の怪我や体調のことをわりとしつこく書いてるんですけどね。でもどれも語り口が深刻にならず、そこはかとなくユーモアがただよっているところが木山捷平らしい。

■4月の家族の文化祭、そして東京蚤の市が終わってすっかり気が抜けてしまってて、部屋の片づけもあんまりできず、いまだに本を入れたままの段ボールがいくつか残ってしまっている状態です。蚤の市は、天気にも恵まれ入場者数も過去最大の3万人を超えたようで、カヌー犬ブックスのブームも常に人がいる状態でした。皆さまありがとうございました。次回は10回目ということで、もっと盛り上げていきたいと思ってます。って何を考えているわけでもありませんが、まずは取り扱う本の種類をもう少し増やして、もっといろいろな人に興味を持ってもらえるようにしたいです(特に男性)。

-左が今回の蚤の市、右が第1回目の蚤の市のカヌー犬ブース

■本の出し入れのついでに7インチを移動させていたりしていたら、レゲエのシングル盤が何枚か出てきたので、夜時間があった時になんとなく聴き始めてしまって、今年の夏はレゲエのシングル盤を中心にレコードを買ってみようかと思っています。レゲエといってもボブ・マーリーみたいなルーツロックレゲエでもなく、スカでもなく、もちろんダンスホールレゲエでもなく、ロックステディ後期から70年代のソウルぽいもの~ダブが好きで、できればインストがいいなぁとか思っているので微妙にどのジャンルを見ればいいのかいまいち分かんないんですよね。
基本的には昔から好きなMoodiscやRandys Records、Dynamic、Joe Gibbs、IMPACT、Rockers、Trojan、Wackiesといったレーベルを確認しつつ、試聴してみるという感じで集めてるので思ったようにすすみませんが、まぁ興味が向いているうちは気長にいきます。つぎにどなたかにDJを誘っていただいたときは、多分レゲエのレコードばかりになるかもね?

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「辻邦生全短篇 I」-辻邦生-

-■パリに留学中に執筆され、帰国後の1961年に発表されたデビュー作「城」から、この単行本が出た1978年までに書かれた短篇を制作順に編集したもの。この「I」では1967年の「洪水の終わり」までが収録されています(なので、発表順では一部入れ替わっている作品もあり)。
死や狂気、戦争などといった暗い影がべとりと貼りついた作品がほとんどなのですが、読んでてつらくなるほど重くならないのは、舞台となっているのがおもに外国だったり、主人公が留学中の大学教授や記者といったちょっと現実から離れた設定で、かつ物語の中で狂気に陥るのが主人公ではなく、主人公はその様子を語る人物として登場することが多いせいなのかもしれません。

■あっという間にゴールデンウィークもおしまい。
前半は長野の小諸にある茶房 読書の森というところに行ってきました。茶房 読書の森は、オーナーが建てた小屋やゲルがいくつかありそこに泊まる形のゲストハウスで(というのかよくわかりませんが)、うちは、絵本作家の田島征三が壁の絵を描いた征三ハウスに宿泊しました。キャンプ場ではないけれどバンガローに泊まるイメージですかね。
周りには、下から空気が出ていて上に竹でできた上がついており、そのあいだにある穴を抑えると音が出るどうらくオルガンやピンホールカメラの原理を利用して、真っ暗な中にスクリーンが設置されていて壁の穴を通して外の風景が上下さかさまに投影される小屋などがあり、茶房のほうにも絵本の部屋があったりします。でも基本的には、池があって、その周りを林や田んぼ、畑が広がっているという風景が広がっていて、子どもたちもそちらのほうで遊びまわっていました。子どもたちの後ろから道を作りながら林の奥へと進んでいくと自分が子どもの頃を思い出したりします。

夜には、山菜を中心にした食事が出て、お酒を飲みながらオーナーやほかの宿泊者たちと遅くまで話したりして大人だけで泊まるのも楽しいと思いますよ。

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■後半は、子どもたちと二宮に帰ったり、府中競馬場や井の頭動物園、昭和記念公園など相変わらず近場で遊び倒すという感じでなんだか疲れました‥‥。出かける場所を決める時は、例えば井の頭動物園に行きつつ、Young Soul Rebelsでやっていた原子高志さんと宮里卓さんの2人展「London Is Far Away」を見に行ったり、昭和記念公園の帰りには立川ルミネのあおぞらガーデンでQuinka,with a Yawnのライブを見るとか、自分の行きたいところを紛れ込ませているのですが、そこまで行く間に子どもたちが疲れてしまったり、途中で「そんなところに行きたくない!」と騒がれたり、なかなか難しい。そしてたいていは一人でビール飲んでます。

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■そんな中、井の頭動物園に行った際に見た(ついでと言うには遠かった)、原子高志さんと宮里卓さんの2人展「London Is Far Away」はよかったなぁ。原子さんのイラストは、デコレーションしたベスパなど相変わらずいい感じだったし、宮里卓さんは、直接面識はないので、(イベントで会ったことはあるかも?)、どんな写真を撮る人なのか知らなかったのですが、シャープな構図のモノクロ写真で、Young Soul Rebelsのお店の雰囲気にぴったりでした。もう少したくさんの点数の写真をゆっくり見たかったなぁ~
ついでに店内の洋服をちらりと見たら欲しい服もあったけど、入り口で水木しげるの妖怪図鑑を見ている子どもたちをそのままにして試着するわけに行かず、断念。ほんとはカフェスペースでコーヒーとか飲みたかったんですけどねぇ。
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「映画を書く」-片岡義男-

-■今まで日本映画を観たことがなかったという片岡義男が、昭和10年から30年までに公開された映画をそれぞれ1本ずつ見て、その感想を書くという趣向の本。昔の日本映画と片岡義男というのはイメージが結びつかなかったけど、原節子について書いた本が出た流れで企画された本らしい。
取り上げられているのはほぼ知らない映画ばかり。でも基本的な流れとしてはまず取り上げた映画のストーリーを説明されるので、特に問題はないです。むしろ片岡義男による再構築されたストーリーを読んでいるだけでもおもしろい。その後、その映画が当時のどういう価値観を元に作られ、どういうメッセージを観客に伝えていたか、そして40年後の今から見るとその価値観はどういう風にとらえられるのか、といったことがつづられている。ご都合主義で流れる箇所を徹底的に指摘し、現代的、かつアメリカ的合理性のある片岡義男の独自の視点や論理が、戦後の日本映画のある意味のんびりした雰囲気に化学反応を起こしている感じです。

■かなり時間がたってしまいましたが、家族の文化祭、無事終了しました。天気もよかったこともあっていろいろなものを食べたり、ワークショップに参加したり、ライブを見たりして一日中楽しんでくれた方が多かったようです。笛をデコレーションするワークショップが盛況だったみたいであちらこちらから子どもたちの吹く笛の音が高架下に響いていました。
カヌー犬ブックスは今回、絵本以外の本も多めに持って行きました。見てくれるかどうかちょっと不安もあったのですが、食べもの関連の本に興味を持ってくれる人も多くいて、いろいろ本について話したりして楽しかったですね。お子さんを連れた親子でも子どもとお父さん(あるいはおばあさん)が絵本を見つつ、お母さんがレシピ本などを見てるみたいな風景もよく見かけたので、いろいろな本を持って行ってよかったと思ってます。
来てくれた皆さま、スタッフの皆さまありがとうございました。家族の文化祭はこれからも定期的に行われるようですので、今後もよろしくお願いします。

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■次は5月14日、15日に行われる東京蚤の市に出店します。東京蚤の市も気がつけば9回目。毎回どんな本を持って行くか迷いつつ、でもうちの場合、そんなにバリエーションもないので、少しずつマイナーチェンジしてみてるという感じです。今回はどうしようかまだきちんと決めてませんが、ゴールデンウィーク中にいろいろ考えたいと思ってます。

 第9回東京蚤の市
  日程:2016年5月14日(土)、15日(日)
  時間:14日(土)10:00~18:00/15日(日)9:00~17:00
  開催場所:東京オーヴァル京王閣
  東京都調布市多摩川4-31-1
  入場料:500円(小学生までは無料)
  ホームページ:http://tokyonominoichi.com/2016_spring/