「安南の王子」-山川方夫-

◆半年ぶりくらいにニチニチ日曜市に行く
続けて山川方夫の「安南の王子」を読んでみる。あとは講談社文芸文庫から出ている「愛のごとく」とエッセイ集「目的をもたない意志」が手に入りやすいよう。2冊くらいならついでに読んでみて、あとは古本屋での出会い待ち、ってところかな。

この本では、バンド仲間で王子様的な存在の男の子を、亡命中の異国の王子に仕立ててパーティに繰り出すという都会の遊民の姿を描いた「安南の王子」や、父親の亡ぎ後、祖父と母親の壮絶な争いに挟まれる長男の心境を描いた「最初の秋」、子どもの頃に近所に住んでいた精神薄弱の少女に慕われ、好きになってしまうという 「千鶴」といった短編5篇を収録されてます。
山川方夫の作品の全体が伝わるように、寓話的なものから私小説的なものまでバラバラな作風の作品を意図的に選択しているのかもしれませんが、なんとなく捉えどころがなく、どこに感情を置いていいのか分かりにくくなってしまっている気がしますね。「夏の葬列」含めて、もう少し収録する作品の選択や並びを変えたら印象が変わるんじゃないかな。まあまだ2冊しか読んでいないので分かりませんが‥‥。

-週末は久々にニチニチ日曜市&籠太でバイキング、という我が家の定番コース。ミオ犬が、いつものようにTAIYODOのお菓子やスコーンを買ったり、ベトナム雑貨のお茶わんやフリマを見たりしているあいだ、わたしと漣くんは泡山さんの絵本を読んだり、ゆるひのシフォンケーキを試食してみたり、通りで遊んだりという感じ。
泡山さんは、前回会ったとぎに、お互いに奥さんのお腹が大きくていつ生まれるのかみたいな話をしたので、もう生まれたのかな、なんて思っていたら、なんと15日生まれたばかりとのこと。しばらくしたら赤ちゃん連れでニチニチに来たりするようになるのかな、ちょっと楽しみ。
そんなわけで夜のおやつはTAIYODOのチョコくるみスコーン。これチョコも自家製なんですよ。チョコって手作りって言っても基本溶かして成形しなおすというイメージですが、カカオから選んで作ってるって聞いてちょっとびっくり。

実際にどうやって作るのかよくわからなかったので検索してみたら、デイリーポータルZでやってました。おそるべしデイリーポータルZ!

 →デイリーポータルZ:完全手作りチョコレート

「夏の葬列」-山川方夫-

◆山川方夫の「二宮」は別な他の世界への入り口という感覚はなんとなくわかるな
山川方夫の本を読むのは初めて。なんで読もうと思ったかと言えば、先日「『洋酒天国』とその時代」を読んでいたら・山口瞳のあとに「洋酒天国」に関わっていた編集者として紹介されていて、それだけでも読んでみたくなるところなんですが、加えて“住んでいた二宮駅の国道でトラックにひかれて亡くなった”なんていう記述があったから。もうこれは読むしかないという感じで本屋さんに行ってみたら、意外と簡単に見つかってちょっと拍子抜けでした。タイトルとなっている「夏の葬列」は中学の教科書に載っているらしいですね。

それに合わせてかこの本自体も中高生が読むことを想定して、「疎開児童」「畦道」「ウクレレ」「納戸」といったかなり平易な言葉まで細かい注釈がついていたりします。でもそもそも疎開していた海岸の小さな町で空襲に会い、主人公をかばおうとした少女を動揺した主人公が突き飛ばしてしまい、少女は銃撃されて死んでしまう。それから何年か経ち成長した少年が思い出の町に戻ってくる‥‥という話は、結末は書きませんがかなり残酷。ほかにも夫婦げんかを題材にした話や幼い子供を亡くした夫婦がそれをきっかけに別居するという話、無個性な団地に住んでいたことに気づいた男の反乱を描いた話など、これは中高生向きなのか?中高年じゃないのか?というテーマの作品が収録されてるんですけど、どうなんでしょ。

わたしとしては海岸の小さな町(二宮)を舞台にした作品がいくつか収録されているのがちょっとうれしい。小学校の時、引っ越してきたばかりの頃(1970年代)の二宮の様子を、ぼんやりと思い出しながら読んでました。木造で銃撃された跡がまだ残ってる駅舎だとか、小学校の木造校舎だとか、舗装されていなくて岩肌がそのまま出ているトンネルだとか、山のてっぺんまトンネルが続いてた防空壕だとか、もちろん海岸の様子だとか‥‥ね。
山川方夫がなくなったのは1965年なので10年以上後の町の様子なんだけれど、たぶんそれほど変わっていないと思う。いや、ある意味、今でもそんなに変わってないのかも?実家に帰っても家のまわりから出ないので、今の二宮の様子なんてぜんぜん分かんないんですけどね。

「正弦曲線」-堀江敏幸-

◆最近よく聴いてるCD(と言っても1か月も放置していたわけですけど)
普段、すでに亡くなっている人の本ばかり読んでいるので、堀江敏幸の本くらいは新しく出たらすぐに読もうと思っているのだけれど、気がつけばこの本も出てから2年も経ってしまってます。
今年に入って刊行されている回送電車シリーズの最新刊「象が踏んでも」や育児をテーマにしたという今までの作品とはちょっ違う趣向の長編「なずな」ももちろんまだ未読のまま。本に限らず音楽に関してもそうなんだけど、新しい作品が出るのが待ちきれない思いをして、発売されるのを待って本屋やCDショップに行く、という楽しみを味わうのが苦手らしい。いや、すごく読みたかったり聴ぎたい気持ちはあるんですけど、なんででしょうね。単に本もCDも中古じゃなぎゃ買わ(え)ないという貧乏症なだけか、新刊の本屋とかに行くとたくさんものあって選択できなくなってしまうという優柔不断な性格のせいなだけなのかもしれないけれど‥‥。

そんなわけでいまだにネットで本やCDを買うこともあまりなかったりします。もうアマゾンとかでCDとか本をチェックし出したらあれも欲しいこれも欲しいというい感じになってしまってきりないんですよ。
基本的には週に一回か二回、古本屋や中古のCDショップに寄って、そこにあるものから、そのとき読みたい本だったりそのとき聴きたいCDを3枚とか4枚くらい買うというのが性に合ってる。

さて、たまには最近よく聴いているCDをいくつか紹介します。

夏の間はめずらしくAORばかり聴いていたのですが、ちょっと涼しくなったころから男性のジャズヴォーカルばかり聴いてます。それは、高円寺のCafe DRAPERIEでパスペールエールを飲みながらフィッシュ&チップスを食ぺていたときに、バックで流れていたバカラックの曲をカバーしたジャズボーカルが心地よかったから。BGMがよかったのか、お店の雰囲気が良かったのか、真夏の昼間から飲むパスペールエールがよかったのか、なんとも言えませんが‥‥。60年代から70年代くらいで、微妙にポップスやロックに傾倒しちゃったサウンドのジャズヴォーカルが今年の秋のテーマになってます。

-■「Right Now!」-メル・トーメ-
メル・トーメほどどんなことをやフてもさまになってしまうシンガーも珍しいんでじゃないでしょうか。このアルバムではサイモン&ガーファンクルの「Homeward Bound」やサークルの「Red Rubber Ball」、マンフレッドマンの「My Little Red Book」といった曲をカバーしています。単なるイメージでしかないのかもしれませんが、気負ったところがまったくなくて誦々とした軽やかなジャズになっているところがいいです。

-■「Lonely Is the Name」-サミー・デイヴィスJr.-
こちらはロジャー・ニコルスの「Don’t Take Your Time」が収録されていることで有名なアルバム。曲としてはアレンジがかっこいい「Up Up And Away」のほうが好きかも。サウンドもヴォーカルも真っ向勝負というか、オレが歌ったらこんなにかっこいいんだぞ、という自信たっぷり感が清々しい。一方「Lonely Is The Name」などのミドル~スローテンポの曲もなかなかよいのですよ。その辺のメリハリがこのアルバムの魅力かもしれません。

-■「Your Mind is on Vacation」-モーズ・アリソン-
モーズ・アリソンの76年のアルバム。ファンキーなピアノで始まる「Your Mind Is On Vacation」がまずかっこいい。この曲はコステロもカバーしているのですがわたしはまだ未聴。「King of America」のボーナストラックに収録されているようです。実を言うとどこどなく“気の抜けた”ようなモーズ・アリソンのヴォーカルが今までちょっと苦手だったのですが、今聞くとその“力の抜けた”感じがいい。改めて50年代60年代のアルバムを聴いてみようと思ったりしてます。

-■「THIS IS ERNlE ANDREWS」-アー二ー・アンドリュース-
アーニー・アンドリュースはジャズというよりもブルースやソウルに近いのかな。1曲目とかもうノーザンソウルですし、オルガンをパックにした曲があったり、曲によってはビッグバンドをバックに歌っていたりして、それも含めてポピュラー歌手という感じなんでしょうね。そういうなんでもあり的なところがまたかっこいい。そう昔はそんなにはっきりとジャンルわけがされてなかったんだよなぁ、なんて当たり前のことを思い出したりしてます。

-■「Tell Me The Truth」-ジョン・ヘンドリックス-
コーラスグループで有名なランバート、ヘンドリックス&ロスのメンバーのソロ。ランバート、ヘンドリックス&ロスを思い浮かべてしまうコーラスが特徴的な「フラット・フット・フルージー」から始まり、ファンキーな「ノー・モア」、ボサノヴァテイストの「テル・ミー・ザ・トゥルース」、ラテンな「アイル・ベット・ユー・ソウト・アイド・ネヴァー・ファインド・ユー」など、洗練されたモダンな演奏と洒脱なヴォーカルが心地よいアルバム。