「赤いベレー帽」-丸岡明-

◆2010年のちょっとしたまとめ
死後にまとめられた随筆集。だからというわけではないと思うけれど、随筆集としてはかなり分量もあり、内容も能についてのものから交友録、釣りの話、身辺雑記までと幅広く収録されているので、一気に読むのではなくてもう少しゆっくりと、何冊かの本と並行して読むくらいのスピードで読めばよかった。複数の本を並行して読むという習慣があまりないので読み終えるまでぜんぜん気がつかなかったです。

ところでこの本で、今年の雑記は59冊目。あと残っているのは小西康陽の「僕は散歩と雑学が好きだった」と「電子音楽InThe(Lost)World」だけなので年内に全部書けないけれど、とりあえず61冊。去年読んだ本で今年に持ち越した本が10冊くらいあったので、読んだ本としては実質51冊くらい。去年は56冊くらい読んでいて、今年は70~80冊くらいは読みたいなと年始に書いてますが、70~80冊どころか減ってるという結果に‥‥。

ただ後半、写真集とか買うようになりましたが、雑誌とかもまったく買ってないし、取り上げている本がほぼ小説ばかりと考えると、だいたい週に1冊読むか読まないかというペースなので、このくらいの分量がちょうどいいのかも、なんて思ったりもします。
来年もこのペースを保つとして小説を50冊、に加えて写真集やデザインの本などを15冊くらい、そのほか10冊くらいで合計70~80冊くらいに着地できるといいなと思いますね。どうなるのかわかりませんが。

それから今年の読書のテーマは“女性作家もしくは随筆家”としていたのですが、こちらもあまり達成できた感じではないです。一番読んだ森茉莉でさえ6冊、あと野上弥生子、萩原葉子が2冊、そのほかには室生朝子、佐多稲子、広津桃子、矢田津世子、増田れい子といったところになってます。年の初めにリストアップした読みたい作家の数に比べて消化数が少なかったのは、単に手に入らなかったから。そもそもリストアップした作家や作品が少なかったのに加えて、読んでもいないのに途中で自分の中での評価が変わってしまったりした作品もありましたしね。

これに限らず本やCDなどでなにかテーマを決めて買おうとするときは、一応、いろいろ調べてみて手帳にリストアップしておくのだけれど、たいていの場合、リストが多すぎて1/3くらいしか手に入れることができてません。

例えば正直なところモーグのCDを60枚近くリストアップしたって絶対全部手に入れることはできないし、そもそもそんなにモーグばかり聴くのか?と思うのだけれど、手に入れられる数が結果的に少なくてもピックアップだけはしておかないと、古本屋や中古レコード屋で探すときに記憶の網に残ってなくて、結局、少ないリストのそのまた半分くらいしか見つけられなかったりするものなんだな、とかなにを言いたいのかよくわからないどうでもいいことを考えたりしている年末、そうやって手に入れた本やCDの片付けがまったく進んでないうちに年が明けそうなんですけど‥‥。

「春のてまり」-福原麟太郎-

◆12月にあいそうなピアノのCD
福原麟太郎の本を読むのは初めてなのかな?前になにか読んだ気もするけど思い出せないしこの雑記でも取り上げてなさそうなので、多分なにかのアンソロジーに収録されているものを読んだだけでなんだろうと思う。三月書房の小型本の随筆集で狂言や能について、読書について、そしてシェイクスピアを中心とした演劇についての三部構成になっています。
偶然ではあるけれど、この前に読んだ安藤鶴夫やこのあと読んだ丸岡明と日本の伝統芸能に精通した人の随筆が続いているのは年末が近づいているから、ではないです。昔は年末になると池波正太郎の本を読み返していたけどね。この勢いで年末年始にかけて岡本文弥の本とかも読んでみようかしらん。

さてクリスマスまでに何枚か12月にあいそうなピアノのCDを紹介します。なんて書いておきながら、気がつけばクリスマスも過ぎてしまいました。年末はなにかと忙しいです。って、遊んでばかりで新しい年を迎える準備とかまったくしてないですけどね。

そんなわけで何枚かまとめて‥‥

-■「ラテン・サイド・オブ・ガラルディ」(ヴィンス・ガラルディ)
ガラルディの「チャーリー・ブラウン・クリスマス」はクリスマスに外せない一枚で、今年もよく聴きました。大きく盛り上がるわけではなく、ふつふつと静かに盛り上がっていく感じのサウンドが家で聴くクリスマスソングとしてぴったり。街に出れば大盛り上がりのクリスマスソングを聴かされるわけだし、家の中では静かに過ごしたいもの。
この「ラテン・サイド・オブ・ガラルディ」では「Mr. Lucky」「Corcovado」「Brasillia」といった曲を軽快なラテン・ボサノヴァタッチで演奏しているのだけれど、ガラルディらしい暖かく優しいピアノのタッチに加えて、さりげなくオーケストラがかぶさってくるところがこの季節に合っていると思わせるところ、かな。

-■「カクテル・アワー」(ポール・スミス)
リキッド・サウンドという室内楽的なサウンドで有名なピアニスト。やわらかなホーンセクションが心地よい「クール&スパークリング」もおすすめですが、ピアノアルバムといえばこちらですね。
このアルバムでは、トニー・リッジのギターがよいアクセントとなっていて、ソフトなだけじゃないメリハリのきいたスウィング感がいい。で、ギターでバーニー・ケッセルが参加している「ソフトリー、ベイビー」や「サウンド・オブ・ミュージック」というアルバムもあって、ものすごく期待して聴いてみたのですが、悪くはないんだけど、トニー・リッジほどのアクセントになっていなくて残念。

-■「80日間世界一周旅行」(ジェラルド・ウィギンス)
ポール・スミスに「サウンド・オブ・ミュージック」があるように、ジェラルド・ウィギンスには「80日間世界一周旅行」があります。って、多分、両者につながりはないと思いますが‥‥。ただジェラルド・ウィギンスもポール・スミスのように歌手の伴奏者として活躍したピアニストという意味では近いのかもしれません。両者とも、強い個性を前面に出すというよりも、明快でわかりやすいスウィング感が演奏の特徴なのも伴奏者ならでは、という気がします。

「Louis Faurer」-ルイス・フォア-

◆ルイス・フォアの写真集とロンドンで撮った写真
2002年にヒューストン美術館で開催されたルイス・フォア回顧展を機に刊行された写真集。1940年代~1950年代におけるニューヨークのストリートを撮った作品を中心に、未発表作品や雑誌出版時以来公開されてない作品など、彼のキャリア全体を振り返ることのできる内容になっています。

個人的には、ルイス・フォアの写真集といえば、「デジャヴ」のルイス・フォアの特集号とPhotoPocheシリーズの写真集だけしか持ってなくて、洋書を置いている本屋でもなかなかみつけることができずにいたのですが、いつのまにかこんな本も出てたんですね。PhotoPocheシリーズは、いろいろな写真家の作品を手軽に見れていいのですが、ポケットサイズというところが難点だったので、大判の写真集が手に入ってうれしい。
わたしの中では、アンリ・カルティエ=ブレッソンとルイス・フォアは、写真家として別格で、ギミックやわざとらしさがほとんどなく、絶対に真似のできない完成度でストレートに写真とはこうあるべきというものをのを提示してくれる写真家なんですよね。

話は変わりますが、最近、iPadを買ったせいで、iPadに入れたり、Flickrにアップしたりするために、写真をスキャンするのがすっかり楽しくなってしまってます。デジカメだったら普通のことだよって言われそうですが、いまだにフィルムのカメラを使っているわたしとしては、単純に大きなサイズで手軽に見れるのがいい。ほんとは年に一回くらいの割合で、気に入った写真を引き伸ばしてまとめておきたいんですが、引き伸ばしってけっこう料金かかるし、別に展覧会に出すわけでもないし、と考えるとなかなか難しくてできないので、まぁ当分はスキャンしてiPadで見るという形に落ち着きそう。
で、普段はそんなに写真を撮っているわけではないので、昔に撮った写真も気に入ったのをスキャンしてみようと、昔のクリスマスの時期に行ったロンドンの写真を見返してみたのですが、いやいや、なぜかガラスに映った風景や人の写真が多くてちょっと笑えました。多分、ルイス・フォアの影響をそのまま間に受けて撮ってるんでしょうけれど、ロンドンに行ったのは2003年の12月なので、ルイス・フォアの写真を見はじめたばかりというわけではないし、その前の北欧旅行のときの写真は映り込みを意識したものは少ないので、何かあったのでしょうかねぇ、まったく思い出せませんけど。
しかし、今になってみると、わざわざイギリスまで行ってガラスに映りこんでいる写真を撮るよりも、もっと素直にはっきりと被写体がわかるような写真を撮ればいいのにと思います。でもまたどこかに行ったらそんなことも忘れてひねくれた記念写真を撮っちゃうんでしょうね。

「アンビエント・ドライヴァー」-細野晴臣-

◆12月はピアノのレコードを聴く。その1:「リトルバード」(ピート・ジョリー)
細野晴臣の本を読むのはこれが初めて。これまでインタビューなどでは細野晴臣が語る活字を見てきたけれど、それとはまた違う面が見えたりして新鮮だったので、ほかの本も読んでみようと思ってます。とはいうものの、よく考えたら80年代後半以降、細野晴臣の音楽もきちんと追いかけてなかったので、これを機に今までアナログでしか持っていなかったアルバムを買い直したり、抜けているものをそろえようと思う。
今年は山下達郎のアルバムを買い続けてて、あと数枚くらいになったので、それが終わったら細野晴臣の番かな。山下達郎と違って出してるアルバムの量が多いし、アルバムを一枚だけ出したユニットなんてのたくさんあるし、手に入りにくいものもあるので、一年なんてことは言わずに気長に集めたいと思います。

さて今日のピアノアルバムは、ピート・ジョリーの「リトルバード」。
録音時期が近くてメンバーもほとんど同じの「スイート・セプテンバー」というアルバムもありますが、12月なんでこちらを。ウェストコーストのピアニストは、全体的にアクの強い個性的な演奏というよりも、スマートになんでもこなしてくタイプが多くて、このピート・ジョリーのそのタイプのピアニスト。いや、多分ここで紹介するのはそんなピアニストばかりになるかもしれません。
このアルバムでは、まだいわゆる“ジャズファンの好むジャズ的”な演奏が聴けますが、これ以後、1960年代後半コロンビアからよりJAZZ~MOR的なサウンドになり、さらにA&Mからは、ハーブ・アルパートのプロデュースの元、ロジャー・ニコルスの「ラヴ・ソー・ファイン」のカバーを収録したアルバムをA&Mから出したりしてます。ほんとはそっちのほうが好きだったりするんですけどね‥‥。
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タイトルとなった「リトル・バード」は、ピート・ジョリー作のちょっとボサノバっぽいリズムのラウンジテイストの曲。続く「スリー・フォー・ファイヴ」は、3拍子のテンポアップした曲で、唯一ギターのハワード・ロバーツが演奏に加わります。わたしとしては、買ったときは半分くらいギターが入っていることを期待していて、実際聴いてみた感じでもギターの入った編成もよいと思うのですが、CDについている解説では、「甘い」「1曲だけで良かった」などと書かれてます‥‥。あとは最後に入っている「フォーリング・イン・ラヴ・ウィズ・ラヴ」。この3曲がわたしのベストトラックかな。

もちろんエルマー・バーンスタイン作曲で映画「アラバマ物語」のテーマ?「トゥ・キル・ア・モッキンバード」や「トゥート・トゥート・トゥーツィー(グッドバイ)」などの軽快な曲が好きだし、「ネヴァー・ネヴァー・ランド」や「スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モースト」といったスローなロマンチックな演奏もよいですけどね。