いつか大正・昭和初期の文壇における学閥(というのかな)について――具体的に書くとまずは早稲田、慶応から、――きちんと調べてみたいと思っている。思いつくままに簡単に書くと、早稲田は、横光利一、正宗白鳥、井伏鱒二、尾崎一雄、広津和郎、小沼丹・・・・あと個人的には、稲垣達郎とか岩本素白も入れたいところ。それから慶応では、小島政二郎、久保田万太郎、池田弥三郎、戸板康二、そしてこの水上瀧太郎などがあげられると思う。早稲田、慶応のほかに、東大仏文というのも気にはなっている。といっても、太宰治とか芥川龍之介、山田稔、澁澤龍彦、大江健三郎くらいしか思い浮かばないが。しかもあまり脈絡がない。
水上瀧太郎は、大正15年に「三田文学」を復刊させた人物、そして明治生命専務取締役として実業家と文学者の二重生活を続けた人物として、慶応出身のさまざまな作家の回想録に書かれているのを読んで興味を持った作家。
東京山の手生まれの潔癖すぎるきらいのある主人公と、周りに住むどこかいい加減な大阪人との対比が強調されて描かれるこの「大阪の宿」は、明治生命の大阪支店勤務時代に書かれた作品。もっともこの前に書かれた「大阪」に比べれば、その潔癖さもかなり緩やかになっているらしい。確かに周りの人に振り回されつつも、一方で振り回されることを楽しんでいるような感じもうかがえて、それが、小島政二郎や里見弴のさばさばした性格とは違った山の手ッ子の気質が現われているようでおもしろい。個人的には、水上瀧太郎の書く東京を舞台とした東京人たちの話を読んでみたい。