「東京震災記」-田山花袋-

ある意味タイムリーな本かも、なんて思ってみたりして‥‥。
関東大震災の様子を書いたものとしては、井伏鱒二の「荻窪風土記」と永井龍男の「東京の横町」ぐらいしか読んだことはなくて、それも全体の中の一部分に描かれているに過ぎない。大正時代の東京ということも含めて震災関係の本をきちんと読んでみようかな、とちょっと思うけれど、実際にそういう本をリストアップしたり探したりする気はあまりなかったりもする。
おぼろげな記憶だけれど、「荻窪風土記」では、震災の後に被災者たち、また被害に遭わなかった人が一緒になって助け合うという光景、永井龍男の本でも神田近辺で自身にあった著者の家族や近所の人たちが力を合わせて乗り切るという光景が描かれていたような気がするのだが、田山花袋の描く震災はどちらかというと、被災者の証言をうまく物語のエピソード風にして描いているものの、震災の悲惨さ壊滅のひどさが強調されているようだ。これは震災にあったときの年齢によるものなのだろうか。それまで親しんできた東京や自分が積み上げてきたものに対する愛着の違いが、震災に対する気持ちに出ているのかもしれない。まぁ適当ですが‥‥。ちなみに井伏鱒二は25歳(1898年生まれ)、永井龍男は19歳(1904年生まれ)、田山花袋51歳(1872年生まれ)の時に震災にあっているので、親子ぐらいの年の差はあるわけだ(昔は数え年なのでプラス1歳になるのかな)。震災に対する気構えが違ってくるのは当然ですね。