まったく救いようのない、やりきれない気持ちにさせられる物語なのだけれど、読み終わって思い返してみると、私生児という主人公の生い立ちや、血のつながりのない姉たち(とその夫たち)の自分では主人公を思いやっているつもりの悪意のかけらもない押しつけ、太平洋戦争直前という不景気で暗い時代背景、そしてその当時の道徳観・・・・などが強調されているだけで、結局は主人公のなんらかの欠陥によって引き起こされた出来事なのではないか、と思ったりもするわけで、だからこそそうした周辺の要因が強調されているのかもしれません。でも“風のない日々”というタイトルは物語のテーマをうまく表していて秀逸。特に、会話もなく、お互いに理解しようとするのでもなく、思いやるわけでもなく、逆に言い争いやけんかなどもなく、すれ違いさえも起きていないような、主人公夫婦の毎日の生活は、まさに“風のない日々”で、淀んだ空気だけがやけに暗く重い。風が起きなければ、流れはよくならないし、もし起きないのであれば、自分で風を起こさなくてはいけない、ということだろうか。
とはいうものの、こう暑い日が続いていると、いくら風を起こしても流れてくるのは湿気を含んだ生ぬるい空気だけで、どうにもならない。一晩中エアコンをつけて置くわけにもいかず、夜中に何度も目が覚めてしまい、いつでも寝不足、という状態。だからというわけでもないけれど、涼しくて暗い映画館で映画を観ていると、つい眠ってしまう。先日観た「ライフ・イズ・ミラクル」なんて、予告が始まると同時に眠ってました。さすがに予告から寝ていたので本編は3/4くらいは見れたので、よかったことにするけれどね。
「ライフ・イズ・ミラクル」は、「黒猫白猫」や「SUPER 8」、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「アンダーグランド」などで知られるエミール・クストリッツァ監督の最新作。ボスニア紛争を背景としているのだが、暗い雰囲気はなく、哀しみと陽気さが混じり合って不思議な魅力を醸し出している。登場人物たちも泣いたり、笑ったり、怒ったり・・・・と感情の起伏が激しい。ちょっと前まで親しみを込めて語り合っていたと思ったら、急に怒り出したりする。しかもその辺のものをひっくり返すは壊すはでかなり激しい。セルビア人はそういう気質を持っているのだろうか。
ついでにクストリッツァ監督の作品を検索してみたのだけれど、「アリゾナドリーム」もクストリッツァ監督作品なのですね。ジョニー・デップ主演。懐かしい。なんでだったか忘れたけれど、シネセゾンに観に行きました。確か映画好きの友達と1日に3本の映画観ようと言うことになって、一緒に観に行った時のうちの1本だったので、その友達に勧められたのかもしれない。で、このときも眠ってました。
思い起こせば1994年の夏も映画館で眠ってばかりいたような気がします。ほかには「トリコロール 青の愛」も寝てた記憶があるし、「レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う」なんか5、6人で見に行ったのに、最初から最後まで全部観てみた人がいなくて、映画が終わった後、それぞれが観た場面をつなぎ合わせてストーリーを完成させたこともありました。
ほかにも観たい映画があるんですけど、今年の夏もそんな映画館で寝てばかりの夏になってしまうのでしょうか・・・・。