少し早めに仕事を切り上げてブックオフに寄って帰る。定期券内にブックオフがあるとつい寄ってしまうのは私だけか。平日の夜は、漫画の立ち読みする子供たちもそんなにいないし・・・・。とりあえず100円コーナーから眺めていくのだけれど、下の棚に何冊か本が積んであって、よく見ると一番上においてあるのは、「父の乳」。しかも100円。思わず運命か、と思って、近寄ってみると、ちょっと離れた場所で本を探していたおじいさんが近寄ってきて、その「父の乳」の上に手に持っていた本を重ねて移動させてしまった。どうやらその人がすでに確保した本だったらしい。
「娘と私」は、フランス人であった最初の妻とのあいだに生まれた娘、そして妻の死後、再婚した相手との交流を描いた私小説風の実際にあったことをつづった物語。架空の物語を作り上げるというタイプのものが多い獅子文六としてはめずらしい作品で、以前に随筆で読んだエピソードなども次々と出てくる。はっきりいってものすごく長い随筆という感じですね(文庫本で2cmくらいの厚さがあります)。そして「父の乳」はそれ以前、彼が10歳のときに死別した父の思い出と2人目の妻が亡くなり、娘が結婚した後再婚した3人目の妻との間に生まれた息子のことを書いた作品なのです。獅子文六の作品はただでさえ手に入りにくいので、次に出会うのはいつのことになるんだろうか。