安藤鶴夫は、芸能記者として都新聞、東京新聞などに文楽、落語、演劇評を執筆しながら、贔屓にしていた芸人についての芸談物を発表した作家で、講談師、桃川燕雄を主人公にした「巷談本牧亭」は、第50回の直木賞を受賞しています。私は落語などの下町の芸能についてぜんぜん詳しくないのだけれど、下町を中心とした東京についてのエッセイなどもいくつか出しているとのことだったので、いつか読んでみようと思ってました。まぁ一冊目としてはこんな文庫がいいんじゃないか、と。
この本ではテーマを「I.東京っ子として」「II.芸の人たち」「III.人との出会い」と3つに分けて幅広く安藤鶴夫の文章にふれられるようになっています。芸人や役者などについてのエッセイも、その書かれている人自身がおもしろいということもあって、知らなくてもおもしろいし、これをきっかけに調べてみたり、できることならCDやテープもちょっと聞いてみたいと思う(図書館とかにありそう?)。
ただしいろいろなテーマの中にそれに関するものが入っているという構成のせいで、いきなり「寄席紳士録」なんて読んだらつらいかもしれないけど。