「呑めば都―居酒屋の東京」-マイク・モラスキー-

-■著者のマイク・モラスキーは、アメリカのセントルイス市生まれで、大学を卒業後、日本に留学しそのまま日本で暮らし、一橋大学で社会学の教鞭をとったり、ジャズ・ピアニストとしてライブハウスで演奏したりしているとのこと。そんなアメリカ人の著者が、普段飲み歩いている東京の赤提灯について書いた本。登場するのは溝口や府中、立川、洲崎、赤羽、立石、西荻‥‥といった東京の周辺の路地にある居酒屋で、そのお店や周辺の地域の成り立ちや店主や常連客とのやり取りがつづられている。銀座とか六本木、新宿といったところは出てこないところがおもしろい。
社会学の教授らしく、戦後から今にいたるまでの町の変遷などを、古くから住む人からヒアリングしたり、図書館などの文献を調べたりしているし、文章もかなりしっかりしているので、読んでいると、これを書いたのがアメリカ人であるということを忘れてしまう。日本酒についての知識も深いし、居酒屋に対する基準も厳しい。本屋さんでこの本を初めてみたときは、居酒屋についてアメリカ人が書いているのはめずらしいし、どういう印象を持っているのだろうか?アメリカとどう違うのだろうか?などと思って手にとってみたのですが、そういう意味では、こういう居酒屋について語っている本を出している日本人と感覚的にはそれほど変わらないかもしれない。ただ日本人が書くとどうしても子どもの頃の町の記憶などと結びついて、どこかノスタルジックな感情が出てきてしまったりするけれど、この本では、開発によって自分の好きな居酒屋や町の横丁が消えていくことに対する焦燥感はあるにせよ、そういうノスタルジックなところは希薄なところがいい。

-■個人的には、ここに取り上げられているような飲み屋は好きだけど、わざわざ行くのもなんだよなぁと思ってる。自分の生活圏の中で、チェーンではなくて個人でやっているところで、そこそこおいしくて、一人で居ても居心地が悪くなければ、わたしはいいです。それほどたくさん飲めるわけでもないので、どこかにいって飲み屋をはしごするということもできないしね。
あと、たいてい一人で飲みに行くときは、平日休日かかわらず、古本屋やレコード屋に行った後が多いので、立ち飲みはきつい。まぁいろんなところに行って飲んで楽しそうなので、ときどきどこかに行ってみたくはなりますが。