「ジョン・クレアの詩集」-上林暁-

自分で言うのもなんだけれど、渋い本ばかり読んでるなぁ。というより執筆時の平均年齢が高すぎ!この本もあとがきで書かれているように上林暁の25冊目の本で60代後半、70歳目前の作品集です。いや単に若いときの本が見つからなかったり、見つかっても高かったりして手に入らないだけなんですけど。これらの本を読んでその作家の作風などが分かるかということについてはちょっと疑問。でもこの現役ではないリタイヤして肩の力が抜けた感じの文章が、今の私にとっては魅力的でもある。そういう意味では山口瞳は最後まで現役だったのですね。

今日は、初台のオペラシティで10月16日から行われているヴォルフガング・ティルマンス展に行って来ました。初日は本人によるトークショウが行われたこともあって、会場はかなり混み合っていたらしい。私の場合、この展覧会を知ったときには、すでに終わってました。残念、トークの内容(テキスト)は近日公開予定らしいので、ホームページを時々チェックするつもり。まぁテキスト読むんだったら雑誌のインタビュー読んでるのと変わらないわけだが・・・・。
額に入っているプリントももちろんあるし、プリントがそのままテープで貼られているものもあるし、プリンターでプリントアウトされたものあったり、壁の上の方に張られている写真があったりと、それぞれ一つ一つの写真をじっくりと見ていくというよりも会場全体で一つの雰囲気(というとちょっと安易な気もしますが・・・・)を作り出してる感じの展覧会だったので、今日も割と見に来ている人が多かったけれど、それほど気にならずにゆっくり見れました。

「歳月-安藤鶴夫随筆集」-安藤鶴夫-

安藤鶴夫は、芸能記者として都新聞、東京新聞などに文楽、落語、演劇評を執筆しながら、贔屓にしていた芸人についての芸談物を発表した作家で、講談師、桃川燕雄を主人公にした「巷談本牧亭」は、第50回の直木賞を受賞しています。私は落語などの下町の芸能についてぜんぜん詳しくないのだけれど、下町を中心とした東京についてのエッセイなどもいくつか出しているとのことだったので、いつか読んでみようと思ってました。まぁ一冊目としてはこんな文庫がいいんじゃないか、と。

この本ではテーマを「I.東京っ子として」「II.芸の人たち」「III.人との出会い」と3つに分けて幅広く安藤鶴夫の文章にふれられるようになっています。芸人や役者などについてのエッセイも、その書かれている人自身がおもしろいということもあって、知らなくてもおもしろいし、これをきっかけに調べてみたり、できることならCDやテープもちょっと聞いてみたいと思う(図書館とかにありそう?)。
ただしいろいろなテーマの中にそれに関するものが入っているという構成のせいで、いきなり「寄席紳士録」なんて読んだらつらいかもしれないけど。

「秋日和」-里見弴-

タイトルですぐに分かるように小津安二郎によって映画化された物語の原作。といっても、小津安二郎と里見弴が一緒にストーリーを考えた後、それぞれで小説化、映画化を行ったという話をどこかで読んだことがあります。
「秋日和」のほかに死んでしまった昔の親友の隠し子と実の息子が恋に落ちるのを止めようとする映画監督を描いた「ひと昔」や「藝者にでる」などの作品が収録されているのですが、どれも人情話というかちょっとした小話みたいなストーリーにもかかわらず、バタバタした感じがあまりなく穏やかな雰囲気の作品ばかりで、文字通り秋の晴れた日に喫茶店の窓際の席に座ってページをめくるにのにぴったりの本かもしれません。

さて、昨日は久しぶりに気持ちのよいお休みの日で、でも特に何をする、どこに行くというわけでもなかったのですが、午前中から窓を開けて、掃除をしたり、布団を干したり、洗濯したり、レコード聴いたり、ソファーで寝ころんだり、本を読んだり・・・・そんなことでもなんだか心地いい気分。そして秋のこういう日には、なぜかPLECTRUMの「THE ADVENTURE OF PONY RIDER」を聴きたくなってしまう。
PLECTRUMは、私にとってストレートな青春ギターバンド。このアルバムが出たときには私はもう20代後半だったせいもあり、ある意味ちょっと振り返るという意味で、そして自分がこういう音楽をよく聴いていた頃にはなかったまっすぐさや素直さを、そのまま奏でているような感じに惹かれてるのかもしれません。多分、10代の終わりとか20代のはじめだったらいいとは思えなかったと思う。同じような意味でArchの「In The Crosstown」やGomes The Hitmanの「weekend」もときどき続けて聴きたくなります。

「遥拝隊長・本日休診」-井伏鱒二-

初めての暗室作業。前に書いたように新しい写真を撮れなかったので、朝起きて古いモノクロ写真を探してみたのだが、ない。アルバムに入っているのはカラーばかり。結局10年近い前の写真を持っていく。
横浜の梅香亭や喫茶ブラジル、中華街の小さな店・・・・などが写っていて、梅香亭で食べたハヤシライスはおいしかったなとか、レジの前に座ってテレビを見ていたあのおばあさんはもう亡くなってるのかな、とかこの写真に写ってる幼稚園くらいの男の子も今では中学生か高校生くらいになっているのか・・・・なんて考えるとちょっと感慨深い。C35で撮ったらしく、ちゃんとピントが合ってないような気がするけれど、まぁよしとしよう。・・・・と軽い気持ちで写真美術館のアトリエへ行ったら、ほかの人は外国の写真とか飼っている猫の写真とかまさにお気に入りの写真を引き伸ばしたい!という感じでまいる。

まぁ引き延ばし自体は、2時間半という限られた時間ではあったけれど、楽しかった。モノクロだと色の濃さを変えることぐらいしかできませんが(ホントはもっといろいろできるのだろうけどね)、それでも上半分だけ明るめにして下半分暗めにしたりといろいろやってみることができました。今度はカラーで色合いとか微妙に変えてみたいですね。「フォトショップでやったらすぐじゃん」とも言えますけどね。